2020/07/29
今こそ考えたい消費者視点のテイクアウト・デリバリー「売れる化」対策
新型コロナウィルス渦の中、デリバリー、テイクアウト(以下、T/O・Del)へ多くの飲食店が取り組み、また紹介するサービスも続々と登場。市場では優勝劣敗が加速しています。その中で成果を上げるためには、飲食店の都合だけでなく、“消費者視点”で「売れる化」対策を考えることが重要です。
●せっかくの利用がかえって店の評判を落としかねない
私自身も色々とT/O・Del利用してみましたが、残念なものもありました。雑な印象の商品は、届いた瞬間にがっかり。何より「心」が感じられない。「こんな状況だから無理もない・・・」とも思う一方、再びその店のT/O・Delも利用しませんし、お店にもいきません。
ホントは心優しい、お客様想いの人が作っているのかもしれません。でもT/O・Delでは顔が見えないがゆえに「心」は伝わらないんです。 コロナ影響も長期化する中、せっかくの利用が店の評判を落としてしまっては逆効果。営業を続けることが、かえって負のサイクルを回すことに繋がってしまうのです。 T/O・Delはこれまでの飲食店でのやり方と勝手が違う…は勿論あると思いますが、お客様の立場で「魅力的か?」「そのやり方でよいのか?」を今一度考えていただきたいのです。
●選ばれる、高満足度の商品を作る「6つのポイント」
メニューを大幅に変えなくても出来る「また利用したい!」と満足いただける工夫のポイントをまとめました。
▶ショップカード、メッセージカード
不思議とショップカードやチラシが同封されている店は少ないように思います。さらに手書きの御礼メッセージなどがあれば「心」が伝わりますよね。必ずしもデザイン性が高いものでなくても、割引クーポンつけなくても、お客様の満足を気遣う「心」が伝わるか。リピート利用はこうした細部で変わってくると思います。
▶ポーション
弁当以外の総菜では、量が多すぎると注文しづらくなります。 T/O・Delでは「1名での利用」も多いと思いますが、もともとこの「ひとりめし」は首都圏の夕食で20%以上、街によっては夕食需要の40%近くを占めます。特に女性の「ひとりめし」は急増しており、ここ3年間で14%も上昇しています(ホットペッパーグルメ外食総研調べ) 例えば一人でのランチ利用が後々のグループや家族での利用につながります。
女性の「一人外食」、延べ回数が3年間で14.2%増加。ホットペッパーグルメ外食総研が調査
また、休校の学校が多いエリアであれば子供向けサイズのメニューも需要が高いでしょう。お店の商圏に合わせた、お客様の「シーン」(食事機会の種類)に向けたポーション設定は重要です。
また、休校の学校が多いエリアであれば子供向けサイズのメニューも需要が高いでしょう。お店の商圏に合わせた、お客様の「シーン」(食事機会の種類)に向けたポーション設定は重要です。
▶パッケージ
届いた時の期待感、フタを開けた時の高揚感は重要です。必ずしも贅沢な容器を使うということではありません。
見て華やかな、楽しい演出、凝縮感が感じられると効果的です。「原価が上がる」…という事情も分かりますが、原価に見合った対価で売れる商品をいかに作るか?が重要ではないでしょうか? 縮小均衡でありきたりの無難な商品で戦うには厳しい市場環境と考えましょう。
▶弁当のみのラインナップではなく、サイドメニューの充実
夕方以降の食事の場合は弁当単品ではなく、ある程度のバリエーションは欲しいもの。糖質コントロールやカロリーを気にする人などには、「おかずのみ」「野菜メニュー」を選んで買えることも重要です。
・お惣菜としての利用
・プラスワンメニューの追加で単価UP
・お代わり(ライス、付け合わせ野菜、汁物など)
・家飲み用のおつまみ系メニュー
・ミールキットとして提供
メニューを増やさずとも、様々なシーンでの食ニーズに合わせた提供のバリエーションが購入機会を作ります。ここで満足いただければ、「お昼のランチも!」「今度はみんなで!」…というリピートに繋がりますね。
▶ドリンク類
「せっかくだから」「どうせ頼むんだから一度の注文で済ませたい」…というニーズはあるでしょう。期限きで酒類販売も可能になりました。単価高めの客層では、より積極的な「ペアリング」の提案も効果的ですね。
▶運ばれた状態、冷めた状態の確認
これは工夫というよりもクオリティの問題ですが、「米飯が固い」「脂分が固まる」「野菜がしなびてしまう」「つゆの染み出し」「振動でバラバラに」etc. 製造時にはわからない変化があることのチェックが必要ですね。出来立て、作り立てという「同時性」は飲食店の強みですが、T/O・Delではタイムラグが生じるが故に発生するクオリティ低下のチェックは重要です。
こうしていくつか考えてみると、これらはどれも今が非常事態だから…ではなく、これまでも言われてきた「顧客視点で考える」ということに他ならないと思うのです。顧客視点で考える=マーケティングなのです。
●知ってもらうための“僅差が大差“「5つのポイント」
消費者にとっては「知らない店」に注文するのはかなり勇気が必要です。
T/O・Del専門サイト/アプリを利用して感じることは、「選びづらい」ということ。地図上に示された店名やイメージフォトだけでは、どうにも選びづらい。また、店の雰囲気や、スタッフの顔が見えない、知らない店を選ぶことに消費者は不安があるものです。急激に大レッドオーシャン化したこの市場でどうしたら知ってもらい、選んでいただけるのか?
▶T/O・Del紹介サービスに複数登録しチャネルを増やす。
出来うる限り複数のチャネルを活用し露出機会を増やす。Googleマイビジネスも含め多くの写真を登録し、未利用のお客様にも情報を伝えられる状態を作ることが重要です。
▶商圏に合わせたメニューの工夫 →前述の通り
▶伝わるメニュー名
ネット上は、写真と文字で選ばれる世界だからこそ、消費者が食べてみたいと思わせるネーミングが重要です。ただ「餃子」「串焼き」といった名前ではなく、味覚、嗅覚、視覚、食感、などに加え、調理技術、店の歴史、食材生産地、生産者、数量限定、受賞歴、人気ランキング、常連客の注文ランキング、相性etc.など、料理名に付加できる情報はたくさんあるはず。魅力的なネーミングを考えましょう。 ※こういったサイトも参考になります
▶メディアの課題
T/O・Del専門サイト/アプリでは、食べたい料理ジャンルの検索機能やフィルター機能、お店の評価などに課題があるメディアも多い。(シンプル=使いやすさという葛藤もあると思われます) 羅列的に表示される店の中で選ばれるためには、メディアが提供する文字数や掲載写真の枠を最大限活用し、また写真やメニュー名、サイト/アプリ上での見え方など、客観的に見て選ばれる状態に出来ているかをまずは確認してください。
▶SNSとポスティング
SNSでお得意様に伝えることは必須。お店のファンからの拡散効果も期待できます。ポジティブに頑張っている姿を伝えましょう。ポスティングは近年コストも下がり、ラクスルなど専門事業者ではチラシ制作と合わせて意外に低コストで実施が可能です。多くの情報量をコンパクトに集約でき、商圏に配布できる特性を活用して、ターゲットに合わせたメニューをアピールしましょう。
●お客様と直に接してきた飲食店だからこそ出来る「価値」の提供を!
「集客できないから、時短営業だから弁当を売る」のではなく、「店空けられないから代替手段としてT/O・Delを売る」のではなく、この非常事態の中で食事をし、家で酒を飲む消費者に想いをはせ、お客様に「美味しい」「楽しい」を提供する…お客様視点で考えることが今求められています。お客様に直に接する中で多くの経験・知見を持つ飲食店だからこそ出来る、お客様にとっての「価値」を提供することが今必要とされていると思います。そしてそこで生まれたものが、外食の新たな扉を開けることにきっと繋がると信じています。戦う飲食店の皆様、そして飲食店へ納入する企業、生産者の皆様を心より応援しております!
次回記事は アフターコロナ、withコロナの環境における 外食の「価値」を深堀したいと思います。
Text by
竹田クニ
専務理事 / 株式会社ケイノーツ 代表取締役
マーケティングコンサルタント
外食産業の進化発展に貢献することをミッションとして、マーケティングを中心にコンサルティング、セミナー・勉強会、食の BtoB マッチングなどを行っている。株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリスト(業務委託)。2018 年一般社団法人 日本フードビジネスコンサルタント協会 専務理事、早稲田大学校友会 料飲稲門会 常任理事、日本フードサービス学会員会員。